2015年4月24日金曜日

コーチング・スキル Coaching Skill

コーチング・スキル Coaching Skill

  コーチングとはアメリカで発達したコミュニケーションを使った「人の可能性を引き出し、目的を実現すること」を達成するためのトレーニングの方法です。
 コーチングのトレーニング研修は、その手法が体系的に整理されていることが特徴で、とても学びやすくなってます。
 コーチングとは何かについて、よく研修の導入で説明されるのが、コーチ(coach)の語源は「馬車」であるということです。顧客を、「顧客が目指す目的地へ運ぶ」ことがコーチの役割ということになります。

 コーチングを実践するためのトレーニングとして体系化されていく中でカウンセリングやコンサルテーションの技法がたくさん取り込まれていて、しかも簡潔に言語化され、演習化されているのでこのようなスキルについて身につけ易い方法を提供しています。
 しかしスキルだけではなく、コーチとしての振る舞いとして、「クライエントの可能性を信じきること」「クライエントが必要とする答えはクライエントの中にあること」「セッションの持ち主はクライエントである」などコーチ側のマインド・セットがこのコーチングの基盤となることが強調されています。このコーチ側のマインド・セットはコーチングのセッション全般にわたってコーチの態度に影響することなのでとても重要です。

 コーチングの場の構成のために、たくさんの労力を使います。「守秘義務」や上述のコーチのマインンド・セットについての説明も欠かさずにクライエントへ行います。クライエントとの信頼関係の形成のために「相手を『認める』」スキル、真の自己実現を理解し、目標を見極めるための『聴く』『質問する』スキル。クライエントの今を確認するための『フィードバック(伝える)』のスキルなど、クライエントが安心・信頼して話せる環境を形成していきます。

 コーチングではクライエントの動機が最も重要視されます。コーチングは「何かを達成したい」「より効率的に」「より高いレベルの」「的確に」などクライエントの高い達成動機、あるいは「何かをなしとげたいけれどもできない、なんとかしたい」という悩みをを持つ人に有効な方法です。言い換えれば、クライエントの参加がなければコーチングは成立しないのです。
 コーチングのを実施する上で考慮した方がいいことに「ティーチング(教える)」と「コーチング」を区別することがあります。どうしても教えたくなる衝動にかられることがあるわけですが、コーチングでのセッションでは「教える」頻度は下げるべきと考えられています。教えることが重要な場合も有ります。その時は「私はいま『教える』という作業」をしていることとその意味をしっかり把握しておきましょう。

 コミュニケーションの基本的姿勢はマイクロ・カウンセリングなどに大変近いもので構成されています。ミラーリング、ペーシング、ゼロポジション、チャンクダウン、チャンクアップ、I(アイ)メッセージなどは家族療法の各技法やNLPなどで学ぶものとほぼ近いものです。

コーチングでは目標設定が重要な項目にあげられています。
①より具体的であるかどうか
②アウトカム(指標)とメジャー(測定)(その目標は何によって達成されたを知ることができるか)
③現実的なことか(達成できる目標かどうか)
④真の目的との関連性(目標を検討していくなかで本来のクライエントの動機(真の希望)から外れていないかどうか)
⑤期限を決める(いつまでに達成するかきめる)
など具体的に取り組んでいきます。

その上で
クライエントの現状を把握し、具体的な方法と過程を考えますそのためには、クライエントのもつ内的、外的な資源(何がその目標達成に役に立つか)を考えたり、目標が達成されたときのイメージを想起して、その過程を振り返ってみたりすることで、成功までに歩んだ過程を明確にし、有効であった方法や役に立った資源を見出していくといったセッションを行います。そして最後にセッション終了後にクライエント起こすべき行動を決めてひとつのセッションを終えます。クライエントが目標達成のために最も必要なことは思考だけでなく有効な「行動」ですから行動レベルのクライエントの意識決定をサポートすることになります。

こうしたセンションの構造は保ちながら、セッションの持ち主はクライエントですから、内容や方向性など、ことあるごとに「この内容でいいですか」「今日はどこまで決めましょうか」「いま不都合を感じていたりしませんか」など状況のコントロールを常にクライエントに渡していきます。そこのとがクラインエントを尊重し、自己決定を支えることになるとされています。

このような体系化された構造と体系化された技法を用いてコーチング・セッションを進めるのですが、この構造や技法が演習とともに使いこなす技法として習得できることがコーチング・スキル・トレーニングの魅力でもあります。

<注意喚起>
 コーチとはスポーツの世界で使われてきましたが、近年は成功哲学的にビジネスの世界でも応用されています。「必ず成功できる!」といった眉つばでかつ高額な自己啓発活動とも結びついているようなのでセミナーなどで学ぶ際には、注意が必要です。


<読んでおくべき本>
「メディカル・サポート・コーチング入門」 奥田弘美 日本医療情報センター 2003

「対人援助のためのコーチング」 諏訪茂樹 中央法規 2007