2015年4月1日水曜日

クライエント中心理論 Client-Centered Theory

クライエント中心理論 Client-Centered Theory


 ロジャーズ(Rogers,C)の提唱する自己理論に基づく(自己不一致を自己一致に運ぶことを目標とした治療的)面接方法をいいます。日本では、カウンセリングを学ぶ際のイロハのイのような扱いを受け紹介されてきた理論でもあります。
「アメリカではすでに心理療法の理論リストから外されて久しい」(諸富 1997)、「もう古い」という声もあります。広く取りあげられただけに功と罪の両面があるように思います。しかし、この理論を抜きに日本のカウンセリングは語れないように思います。
 傾聴や非指示的(ノンデレクティブ)な姿勢などは日本人によほどフィットした理論だったのかもしれません。「人が真に<自分自身>として生きていくことTo be That Self Which One Truly Is」を目指したロージャスの理論は日本人の琴線に触れるものがあるのかもしれません。

「人はみずからの内側に、自分を理解するための大きな資源を持っていること、生きていくことに困難さを抱えて悩んでいても、それを開発していく促進的な心理学的な環境が整えば、そのひとはその力を発揮して、解決に向かってみずからの方法で進んでいくことが期待できる。」

おそらくこのようなまとめ方がロジャーズの理論の理解の仕方の一つになると思います。

<学ぶべきこと>
ロジャーズと言えば、非指示的療法(non-directive)が有名だったりしますが、ロジャーズ自身は後半ではこの概念はあまり用いなくなっているようです。ロジャーズの方法のことを通っぽく「ノンデレ」と表現される方も多いです。形式的・技術的(表面的な面接技術)なことだけが伝承されることを本人自身も危惧していたようで、その理論や思想的なことに向き合うように工夫し、方向性も微妙に変化しています。
 人が自らの課題解決のために自分自身の大きな資源に気づき、開発し、活用していく「促進的な心理学的な環境」を提供するためにカウンセラー側の存在の意味・方法・技術・あり方を探求し続けた方だと思います。
ロジャーズがあげたカウンセラーの態度的な条件などについては深く理解しておきましょう。
「受容」あるいは「無条件の肯定的配慮」
「共感的理解」
「純粋性」あるいは「一致」
「感情の反射 reflection of feeling 」
などがこれにあたります。
こうしたカウンセラー側の態度がなぜ、クライエントに効果的なプラスの心理的な変化をもたらすのかについてのエビデンスを含んだ説明はあまり広がっていないことは残念なことです。どんなクライエントに効果的で、この方法が活きないクライエントがあるのかといった適用の問題も整理されていません。「診断」という概念を「必要なし」としたこの方法の限界や問題点を指摘する声もあります。(国分 1980)
カウンセリングやサイコセラピーがクライエントと治療者の織りなす関係性(相互作用)のなかにその成否の鍵があることを見出したことは大きなことと言えます。

<読んでおくべき本>

友田不二夫先生の「カウンセリングの技術」(誠信書房)や伊藤博先生の「カウンセリング」(誠信書房)など日本のカウンセリングの黎明期に出版され広く読まれた本はいずれもロジャース派とされる先生方であります。
「ハーバート・ブライアンの事例」はロジャーズの方法を理解するために読むべき事例として挙げている方が多いです。カウンセリングやサイコセラピーにおいて初めて逐語記録を公的に刊行したものと言われています。

「ロジャーズ クライエント中心療法」佐治守夫・飯長喜一郎 有斐閣
「カール・ロジャーズ入門 自分が自分になるということ」コスモスライブラリー ,1997