2015年4月10日金曜日

交流分析 Transactional Analysis

 交流分析は、アメリカの精神科医師のバーン(Berne,E)によって開発されたコミュケーションの理論とこれに基づいた治療の体系です。日本でも、個別あるいは集団療法として発展して心理療法などに活用されているほか、自己啓発的な活用もされていて狭義の治療的な場面だけではなく一般にも広まっている理論でもあります。Transactional Analysisの略称でTAと呼ばれることもあります。「構造分析」「交流分析(パターン分析)(ゲーム分析)」「脚本分析」の3つ(あるいは4つ)を軸にして展開されます。

<構造分析>
 自我心理学の理論を援用して個人の心理メカニズム(自我状態)を分析します。自我状態を、親(P)<=Parent>、大人(A)<=Adult>、子供(C)<=Child>の状態に分類し記号化を行います。よく交流分析の自我状態をフロイドの理論でいうところの自我をA、イドをC、超自我をPとして紹介されていることもありますが、2つの理論は同じではないということは理解しておきましょう。交流分析の自我状態の構造分析の優れている点は、自我状態について分かりやすく説明され、可視化できることにあります。
 さらに親(P)は規律的・批判的なPである(CP)<=Critical Parent>と養育的・寛容的・保護的Pである(NP)<=Nurturing Parent>に2分類され、子供(C)は自由・奔放なCである(FC)<=Free Childの略>と順応的なCである(AC)<=Adapted Child>に2分類して捉える方法もあります。これらの自我状態を治療者とのやりとりやエゴグラムといった自我状態の分析テストを用いて可視化して、識別することによって、様々な気づきを得たり自身の不調和な部分を理解したりできるようになります。

<交流分析>
①パターン分析
 自我状態の構造分析を行った後に、2者間あるいは複数の間での自我状態の交流(コミュニケーション)を分析します。コミュニケーションの方向を刺激(S)と反応(R)で捉えたときにAとA(Aの自我状態から相手のAの自我状態に発信された刺激に対して、Aの自我状態で受け止め、A自我状態の反応を相手のAへ返す)、P(S)→Cに対してC(R)→Pなどのパターンを「平行的(相補的)交流」、A(S)→A(R)、P(S)→Cに対してA(R)→Aといったコミュニケーションパターンを「交差的交流」と表現しています。また、一見A→Aで行なわれているコミュニケーションであっても、内面心情的にはP→CとC→Pの組み合わせであったりする二重の構造を持つコミュニケーションを「裏面交流」と呼んでいます。
②ゲーム分析
 ゲームのように繰り返し行われる非生産的な(あまり好ましくない)結末をもらたすだけの、交流様式をパターン化して捉えてみようとする考えです。バーンは著書の中で様々なゲームのパターンを指摘し、面白い名前をつけて紹介しています。

 Why Don't You, Yes But(なぜあなたはしないんですか、ええ、でも。。。のゲーム)
I'm only Trying to Help You(私はただあなたをたすけようとしているだけなのですゲーム)

<脚本分析>
小さい頃からの人生を送るなかで、成立している自身への刷り込みや信念は、これまで分析してきた自我状態の交流パターンを繰り返し繰り返し行ってきたなかで、自分で書き込んだもので「人生脚本」と呼ぶことにしました。ただその脚本は自覚されていないので、きずかない限り書き換えられることはありません。その見えない人生脚本が自分の人生の選択(立場やコミュニケーションの取り方)に大きく影響を与えています。自分の人生脚本に、特に非建設的な脚本に気づき、修正を図ることを勧めています。脚本の成立原因を紐解く基本概念に「ストローク(愛情や承認の要求)」「時間の構造化」「人生態度(基本的構え)」「値引き(ディスカウント)」などがあるので調べてみましょう。


<学ぶべきこと>
 交流分析の自我状態の「構造分析」は、人の自我状態を可視化してみるという大胆な着眼点で、自身の心理的な内面の反応のくせのようなものに対して気づきをもたらしてくれるというツールであります。また「パターン分析」や「ゲーム分析」などのコミュニケーション分析では、コミュニケーションには一点の流れがあって、ある特定の人間関係やコミュニティの中では、これもくせのように行われるパターン化されたやりとりがあって、そのなかにはあまり好ましくない結果をもららすコミュニケーションが繰り返し行われいる状態が多く存在すること、それに気づき修正することで、非生産的なパターンから抜け出す手がかりを掴むことができます。「人生脚本」では私たちが人生に向かう態度は幼い頃からの身近な人たちとのコミュニケーションの中で築かれ、「書き込まれてきた」自覚されていない脚本によって方向づけられているなということとそのことへの具体的な気づきということが大切なポイントですが、その書き換えや再決断に進むのはより治療的な関わりということになりそうです。
 心理療法の技法として発展した理論ですが、福祉や看護の援助者としては、援助者自身の自己覚知やコミュニケーションのパターンを知るトレーニングとしての活用をお勧めします。

<読んでおくべき本>

 「人生ゲーム入門 人間関係の心理学」エリック・バーン著 南博訳 河出書房新社
 「TA TODAY 最新交流分析入門」イアン・スチュアート ヴァン・ジョインズ著 
  深沢美智子 監訳 実務教育出版