2015年4月10日金曜日

危機介入 Crisis Intervention

     危機介入 Crisis Intervention


 「危機」とは状況を示す言葉で、その人が持っている過去の経験や知識、慣習によるこれまでの対処方法では、もはや対応できない問題状況を指しています。「危機」についても諸説あるので「危機理論」も調べてみましょう。一般的に「危機」と言われるものにどんなものがあるでしょうか。突然の病気や怪我、自殺(企図)、失業、近親者との死別などの状況的・偶発的な危機状況もあれば、離乳や入学時の不安からの不登校、思春期の性に対する嫌悪など人の発達のなかで出会う危機状況もあるでしょう。「危機介入」とはこうした危機状況に対して、当事者の危機に伴う感情の表出をサポートし、受け止め、危機状況への適切な対処ができるように支援していく短期的な支援プロセスとされています。人はこうした危機を乗り切ることによってより成熟した自我状態(成長)が促されるとも言われます。
 しかし、危機介入は、その人が抱える心理的な課題の原因と突き止め、洞察したり、問題の完全な解決、そして人格の成長を目標にするアプローチではなく、あくまで今ある危機を具体的な方法で乗り切り、均衡状態に戻ることを目標にした介入方法であることを忘れてはなりません。
「危機」状況のなかでは、当事者の問題解決能力は低められていることは予測しなければなりませんし、そうした状況のかなでは、冷静に洞察的なカウンセリングを行うよりも、指示的(ディレクティブ)に、具体的に対応した方が現実的な対処が容易に手繰り寄せることができます。こうした状況の中では当事者が持っている社会的なサポートシステムがどのような状況であるかを把握することが有効になります。危機の中に現れた具体的に対応、対処しなければならない心理的、社会的な問題を一緒に対処してくれる担い手がどのように整備されているかを把握するようにします。そしてクライエント・当事者が、自分で対処できるように道筋を示したり、ポイントを見極めたりしながら、再びコントロールを当事者に戻していきます。当事者自身が整備された社会的サポートなどを活用しながら自分自身で対処できるところまで支援します。これが「危機介入」のおおまかな考え方です。

<学ぶべきポイント>

 アセスメントの段階で①危機の具体的な内容を把握します(何が起こっているか、出来事は何か)②クライエント・当事者はそのことをどのように捉えているかを確認します。(クライエントの理解の把握)③クライエント・当事者のサポート状況・体制を把握します。④当事者あるいは家族の問題解決能力の様子はどうかを確認します。(今とこれまでの対処能力の把握)⑤身体状況や自殺企図など今後の身体的・精神的リスクの客観的予測と把握をします。
 そして介入の計画を立案します。アセスメントに基づいて、本人の意思や能力を尊重しつつ、周囲のサポート体制の強さを把握しながら、具体的なサポートの活用内容とその手続きなどはひとつひとつ具体的に示しながら、優先順位をつけながら、ひとつひとつクライエントに並走しながら、できるかぎりクライエント自身でできるように、できないところは「代行」をしながら、クライエントと共に解決を進めていきます。危機の前の均衡状態を取り戻せたことを確認できたら介入は終結となります。

<読んでおくべき本>
「危機介入の理論と実際ー医療・看護・福祉のために」ドナ・C・アギュララ 小松源助 荒川義子訳 川島書店機介入 Crisis Intervention