2015年3月26日木曜日

自我心理学 Ego Psychology


自我心理学とは、人に起こる心理的な現象や心理機能を、自我との関係において説明し理解しようとする心理学の領域です。アンナ・フロイト(A.Freud 1985-1982)が行った防衛的自我の葛藤や防衛機制に関する取り組みが自我心理学の始まりとされています。精神分析の考えを基礎にして自我心理学は発展をしました。自我同一性の理論を基に、人の社会的発達段階と心の問題を考えたエリクソン(E.H.Erikson 1902-1994)の研究も有名です。

<学ぶべきこと>
 アンナは、児童心理の臨床で功績を上げた人です。ひとは危機や不安やなことを経験した時に、人はその不安に対して防衛機制を働かせて再適応しようとするという仮説をもとに「抑圧」「退行」「投影」「否認」「合理化」「知性化」「逃避」「昇華」という防衛機制の分類と説明(定義)を行いました。これによりひとが経験する「現実」と「内的な欲求」を調整したり統合したりするこころの働きを説明しています。これを「自我防衛機制 Ego Defence System 」と言います。
 このような防衛機制の働きを理解しておくことで、ひとが不安にさらされたときのこころの働きについて考えるひとつの思考の枠組みを手に入れることができます。

  エリクソンは、比較的、個の要素の強かった精神分析や自我心理学を発展させて、社会的な存在としての個人を見つけていきます。ひとは防衛機制などの自我の機能を使って社会や環境に自己を適応させている「社会的存在」である、それが人間ではないかと主張したのです。「ライフサイクル(一生涯の発達漸成図式)」を示して「乳児期」「幼児期前期」「幼児期後期」「児童期」「青年期」「成人期」「壮年期」」「老人期」の8段階に分けて考えている。エリクソンはこのそれぞれの時期の社会的条件のなかで自己同一性、自分のアイデンティティを確立することが課題となってくる(社会的存在としての自己同一性の確立)としている。この確立に失敗してアイデンティティが拡散すると社会への帰属意識が持ちにくくなり、危機が生まれるとしています。

<読んでおくべき本>
「自我と防衛」A・フロイト著 外林大作訳 誠信書房 (1985)
「ライフサイクル、その完結」E.H.エリクソン・J.M.エリクソン著 村瀬孝雄・近藤邦夫訳 みすず書房 (2003)